研究概要 |
本年度においては、労働市場に関する規制緩和が進められた1990年代後半以降の時期に着目して、日本の大卒ホワイトカラー労働者の就労行動を、企業内外の労働市場における受給調整の場に視点を密着させつつ考察した。研究成果の概要は以下の通りである。本年度の実証の課題は、規制緩和に伴って、受給調整の場を構成する様々な制度がどのように変化したかを明らかにし、それらの制度に関わるアクターの意識と行動を分析することだった。これらの作業を通じて、平成13年度に予定している大量観察調査のターゲットとすべき、以下のような事象を明確化させ得たことがその最大の成果であった。 (1)人材ビジネスに関する規制緩和の影響で、労働者にとって受給調整の場がえられる機会に格差構造が広がっている。こうした観点からの労働市場規制緩和の効果を、企業,個人、仲介者の3者にわたって、本格的に実証研究する必要がある。 (2)解雇規制のあり方など、典型雇用と非典型雇用との間に存在する法的規制の違いが,使用者と被用者双方の行動に大きな混乱をもたらしている。雇用政策の目標を構想し、明確に方向付けるためにも、使用者,被用者の意思決定における、規制についての認知状況を大量観察データで明らかにする必要がある。 (3)90年代の労働市場規制緩和が、女子労働者の就労行動を大きく変質させている。だが他方では、この間、勤労者核家族世帯をめぐる状況も劇的といえるほどの変化が生じている。女子労働者の就労行動を実証的に解明するためには、家族をめぐる変数を的確に取り入れていく必要がある。次年度の研究においては、社会学的な観点からの核家族世帯に関する実証研究を行い,従来の女子労働研究の成果に連結させていくことを予定している。
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