平成13年度においては、IT産業における若年技術者の就労行動に対して、労働需給を調整する各種の制度的機構とその変動がどのような影響を及ぼしているかについて、様々な対象からのヒヤリングを行うことを中心に、実証研究を実施した。主要なヒヤリング対象は、大手コンピューターメーカー人事部、独立系ソフトウェア開発企業人事部門、大手人材派遣企業IT技術者担当部門、外資系情報サービス企業人事部門、情報サービス産業業界団体、電機連合情報産業部門、情報サービス企業を退職した技術者数名である。日本での聞き取り調査を国際比較の観点から補完する目的で、英国及びオランダについての文献調査と研究交流を行った。以上の研究によって得られた成果は以下のとおりである。 1 日本のIT産業における若年技術者は、他産業、他業種のホワイトカラー労働者よりは高い離転職比率を示しているものの、そのことはITエンジニアに関する職種横断的な労働市場が形成されていることを意味してはおらず、これまでのところは、依然として企業内労働市場の影響力が大きいことがわかった。 2 上記の発見にもかかわらず、ITエンジニアに関する職種別労働市場形成に向けての各種の取り組み、様々な制度機構の整備が急展開している。ただしこの動きは、政府の産業政策、雇用政策に主導されたものとみることはできない。技術のベンチマーキング、技術者のコンピタンシー明示化という、IT技術に固有の性格が推し進めているという面が大きい。
|