1.前年度の現地調査で得られた情報・文献に基づき、マケドニアに焦点をあてて南東欧の現状と安定化のための課題に関する論文(日本語)をまとめた。これと同趣旨の英文論文は、体制転換後の10年間を総括する国際会議(2001年8月末、フィンランドのラッペンランタ工科大学主催)が発表した文書(Congress Book)に収録された。 2.体制転換後、中東欧と比べて南東欧の経済再建が遅れていることの原因の一つに、外国直接投資(FDI)の少なさが挙げられる。FDI流入の少なさは、不安定な国際環境(とくにマケドニア)、不安定な国内政治情勢、潜在的な外国人投資家の関心と信頼を高めるための法的・制度的枠組の欠如、法的安定性の欠如もしくは「法の支配」の不在(とくにルーマニア)と関連しているが、こうしたことはCIS諸国とも共通している。この論点は、協定締結校であるハバロフスク国立経済法律アカデミーの紀要(近刊)に掲載される英文論文で論じた。 3.南東欧諸国はみなEUとの政治的・経済的関係を深め、EU加盟を希望しているが、EUの側の対応は個別的である。EUとは、ルーマニアは連合協定を結んだのに対し、マケドニアは2001年にようやく連合・安定化協定を結すぶことができた。南東欧諸国はEUへの依存を深める一方で、EU加盟を目指し、競合関係におかれており、南東欧の域内での相互の協力関係は非常に弱い。この論点は、ザグレブ国際会議(6月末)のために執筆中の英文論文の中で言及される。 4.南東欧における銀行制度改革については資料はそろったが、まだ論文としてまとめるに至っていない。平成14年度の前半にはまとめられる見込みである。
|