南東欧の経済再建、地域経済協力および安定化に関する研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12630050
• 研究機関: 新潟大学
• 研究代表者: 小山 洋司 新潟大学, 経済学部, 教授 (40036588)
• キーワード: 南東欧 / 経済再建 / 地域経済協力 / 安定化 / 銀行制度改革 / 市場経済移行 / ユーゴスラヴィア / ボスニア・ヘルツェゴヴィナ

研究概要

1.ボスニア・ヘルツェゴヴィナでは和平合意以後、経済復興、難民・避難民の帰還事業、民族融和の取り組みがかなり進んでいるが、ひきつづきかなりの期間、SFOR(安定化部隊)の駐留と国際社会の支援が必要である。
2.旧ユーゴではすでに60年代にモノバンキング制度から2層制銀行制度に移行したものの、74年憲法体制のもとで、銀行は自主管理企業に奉仕する金融組織とされ、事実上、債務者(=設立者である自主管理企業)に管理された銀行になり、独立性を欠いていた。この仕組みが80年代に表面化する経済危機の原因の一つであった。91年の連邦解体後、旧ユーゴ継承国家は市場経済へのそれぞれの道を歩んだ。新ユーゴ(セルビアとモンテネグロで構成)では銀行制度改革は大幅に遅れた。89年銀行法以前から営業する旧来の大銀行は、2000年になっても依然として、「債務者に管理された銀行」の状態を脱することができないでいた。その理由は、10年間に二度も戦争を経験したこともあるが、ミロシェヴィチ政権が根本的な解決を避け、中央銀行と国営商業銀行に圧力をかけて、赤字の国営企業を支えるという「ポピュリスト的政策」をとってきたからである。現在、最大の銀行への資本注入および外国人投資家への売却を通じた民営化も考えられている。
3.南東欧諸国はEUへの依存を深める一方で、EU加盟を目指し、競合関係におかれており、域内での相互の協力が非常に弱い。相互の協力強化と投資環境の整備が必要である。この点は、6月14日マルヌ・ラ・ヴァレー大学で開かれた国際会議「EUの東方拡大」でThe EU and Stabilization of South East European Countriesと題して報告した。
4.これまで南東欧に関して発表した論文を(日本語論文は英訳したうえで)英文の書物にまとめた。これは、Niigata University Scholar Seriesの第1号として2003年3月末に刊行される。

研究成果

• [文献書誌] 小山洋司: "Economic Reconstruction of South Eastern Europe : A Key to Stabilization of the Region"Proceedings of the International Conference "An Enterprise Odyssey : Economics and Business in the New Millenium" 2002 held in Zagreh. 70-71 (2002)
• [文献書誌] 小山洋司: "Reforming the Banking System in Yugoslavia"Banking Reforms in South-East Europe, ed. by Zeljko Sevic, Edward Elgar(UK). 309-330 (2002)
• [文献書誌] 小山洋司: "ボスニア和平合意の枠組と経済復興"新潟大学経済学部年報. 第27号. 107-123 (2003)
• [文献書誌] 小山洋司: "新ユーゴの銀行制度改革"新潟大学経済学論集. 第74号. 1-25 (2003)
• [文献書誌] 小山洋司: "Banking System Reform FR Yugoslavia as a Part of Stabilization of South Eastern Eurone"Proceedings of the 5^<th> International Conference "Enterprise in Transition", held by University of Split Croatia on May 22-24 2002. 22 (2003)
• [文献書誌] 小山洋司: "South Eastern Europe in Transition : A Quest for Stabilization of the Region after the Breakun of the Former Yugoslavia"新潟大学大学院現代社会文化研究科. 220 (2003)