本研究の主要目的は、公益事業における費用構造の分析を行ない、その産業における競争導入の可能性の検討や、公共セクターが民間セクターに転換していく際に、効率性を中心としたパフォーマンスが、どの程度向上したのかを実証的に分析すること、そして効率性以外の重要な側面である公共性をいかに維持するかの点に関して検討することである。そして、これらの一連の分析を通して日本の公益事業に対する政策提言を行なうことをその目的とする。公益事業における具体的な分析対象は、(1)鉄道事業、(2)水道事業、(3)郵便事業、及び(4)地方公共サービス、の4つの事業をその分析対象とする。 本年度は、主として鉄道事業と郵便事業の分析を中心に研究を行ってきた。これらの事業に関しての計量分析はほぼ終了し、現在、地方公共サービスのデータの入力と初期分析を終了した段階である。そして、昨年度に終了した水道事業とともに、その成果について専門家の意見を聞くため、国際会議において研究報告を行ってきた。たとえば、鉄道事業に関しては、水谷は6月に香港で行われた、NBERの国際会議で民営化に関する研究報告を行った。また、7月にはソウルで行われた世界交通学会で、水谷・正司が鉄道の規制政策の分析結果を報告した。一方、郵便事業に関しても国際雑誌に投稿すべく、研究論文として成果をまとめている。これらの活動を総合すると、次年度への研究活動にとって非常に実りある一年であったと総括できる。
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