本研究の主要目的は、公益事業における費用構造の分析を行い、その産業における競争導入の可能性の検討や、公共セクターが民間セクターに転換していく際に、効率性を中心としたパフォーマンスが、どの程度向上したのかを実証的に分析すること、そして効率性以外の重要な側面である公共性をいかに維持するかの点に関して検討することである。そして、これらの一連の分析を通して日本の公益事業に対する政策提言のための基礎情報を提示することをその目的とする。公益事業における具体的な分析対象は、(1)鉄道事業、(2)水道事業、(3)郵便事業、及び(4)地方公共サービス、の4つの事業をその主な分析対象とする。 本年度は、主として鉄道事業における競争の効果、地方公共サービスに関する分析を行ってきた。当初予定して地方公共サービスの中で社会資本の分析は、データ入手の限界が年度途中で明らかになったため、詳細な計量分析は断念し、その経年的な変化と地域配分の状況の考察にとどめた。そのかわりに地方公営バスの詳細データの入手が可能となったため、そのデータを用いた計量分析を行うことにした。 本年度の成果としては、昨年度投稿した郵便事業の競争の効果に関する論文が国際学術誌に受理された。また、地方公共サービスに関する論文は、都市再生と関連して、国内学術誌に昨年末に掲載された。また、公共セクターの効率化の経営方法をとりまとめた論文も、国内誌に掲載された。その他、鉄道の上下分離に関する論文、鉄道事業の最適規模に関する論文、バス事業の公営・民営比較に関する論文などは、現在国際雑誌に投稿準備中である。
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