今年度は、第一に、論文「自動車産業の中小企業の雇用と賃金-D社グループの協力会社-」を執筆した。私はこれまでやや長い期間に渡って、マツダの1次・2次の「協力会社」(下請企業)数社を訪問し、雇用と賃金についてヒアリングを続けてきたが、その内容の一部をまとめたものがこの論文である。 マツダグループは、バブル崩壊以降、日本の自動車産業の中ではより厳しい状況に直面している企業グループのひとつであり、協力会社の中でも雇用調整が頻発している。それゆえ、その雇用調整の実情を調査することは、自動車産業の雇用問題を考察する上で意義ある作業であると考えられるため、その調査研究を遂行し論文として執筆した。また他方で、この論文ではマツダの協力会社の賃金管理も考察している。そのことは自動車産業の中小企業の賃金管理に関する研究でこれまで取り上げられることがなかった対象を取り上げたという点で意味がある。さらに前掲の論文の中では、1990年代以降の自動車産業の中小企業における能力主義化の一端も指摘している。 今年度に遂行した研究としては、上記の他に、本田労組を訪問して本田技研工業の賃金の変化に関する情報を入手したことが挙げられる。これにより今後の研究の足がかりを得ることができた。 なお、昨年度に執筆・投稿し公刊されることが決定していた私の論文『自動車産業の人事・賃金と労働組合の賃金政策-C自動車の事例研究-』は、今年度に校正を行い、山口経済研究叢書第29集(山口大学経済学会発行)として8月末に刊行されている。
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