空間障壁を低減させるための多くの努力は、我々が経済発展、産業構造転換、技術革新と呼んでいるものの中核に位置する。蒸気機関、自動車、電話、携帯電話はそれ自体を所有、消費することが最終目的ではなく、人、物、情報を移動させるために使用することを目的としている。 ミクロ経済学で捨象されてきた空間障壁を低下させるための人間活動は、経済発展そのもののダイナミックな過程にほかならない。我々は本来必要とするわずかな商品、サービスを享受するために、無空間ならば必要ない、きわめて巨大な一連の空間克服システムを必要とするのである。空間障壁を低下させるためには、巨大な一連の空間克服システムを構成する五局面を適切に組み合わせる必要がある。 第一の局面は工業化によるモバイル性向上である。第二の局面は、空間克服手段の製造である。第三の局面は、空間克服手段を機能させるインフラの整備である。第四の局面は、空間克服手段とインフラを利用して空間移動のサービスを供給する運輸・通信業の発展である。第五の局面は、立地行動の変質と空間構造の再編である。
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