研究概要 |
3カ年にわたり空間克服と経済発展の関連性について研究してきたが,今年度は,グローバリゼーションや空間克服技術の発展にもかかわらず,関連産業が特定地域に集積し,新技術,新企業,イノベーション創出の拠点となっている現象,すなわち,クラスターの形成原理とその政策的対応について研究を行った。 クラスターの概念は,ハーバード大学のマイケル・ポーター教授によって提示された概念である。幸い,昨年12月にマイケル・ポーター教授来日の折,経済産業省の産業クラスター研究会において,共同研究会を開催することができ,クラスターの概念,政策的対応,日本的特殊問題について理解を深めることができた。現在,日本政策投資銀行地域政策研究センターの研究員とハーバード大学競争力評議会でまとめられたイノベーション・オブ・クラスターの翻訳作業を行っている。また,われわれの研究グループは独自に,世界の産業クラスターについての調査報告書を作成し,昨年有斐閣から『クラスター戦略』として出版し,日本経済新聞の書評欄(短評),週間ダイヤモンドの書評欄に取り上げられ,注目を集めた。今年も有斐閣からクラスター関連の書籍を出版することが決まっており,編者は一橋大学ビジネススクールの石倉洋子教授であり,今回は執筆陣の一人として参加する予定である。 クラスターは産業の生態系と理解することができる。生産工程,原材料,製品特性によって分類されてきたこれまでの産業概念とは異質である。クラスターの構成要素には,その産業に原材料,部品,サービス,人材,情報と提供する企業,団体,ロジステックス企業,大学,研究機関,各種業界団体,自治体などが含まれる。 だが,現在注目されているのは,オペレーションレベルにおける集積利益ではなく,イノベーションの促進という効果である。新しいアイデア,ソフトウェア,サービス,技術,製品と生み出す地域的基盤としてクラスターに注目が集まるようになっている。
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