研究概要 |
本年度は,次年度以降における実態調査のための前提となる分析枠組みの構築と,調査手順を確定するための現地予備調査を実施した. 前者については,このところ日本でも注目され,政策面での具体化がすすめられているマイケル・ポーターの産業クラスター理論を主要な検討対象としてとりあげた.この結果,日本での産業クラスター理論の受容においては,同理論が本来そなえていた最終使用形態の重視という視点(「市場対応」視点)が希薄化し,技術をはじめとする生産条件のみから産業集積を把握する議論(「技術高度化」視点)へと平板化されていく傾向が確認された.また,戦後の産業立地政策史にかんする基礎的な資料を収集し,そこにおける産業集積の政策的な位置づけの変遷を追跡する作業もあわせておこなった. 後者にかんしては,実態調査の対象となる地域の特性を把握するべく統計分析から各産業集積のタイプと動向の整理をこころみた.その結果,一口に産業集積といっても,対象としてとりあげた国内機械金属工業における7つの集積地域における業種的な特化傾向は多様であり,各集積がもつ地域構造的な特徴を重視した調査計画の構築が必要であることがあきらかとなった.このため,実態調査の対象地域を大田区,東大阪市,燕・三条市の3地域に絞り込むこととし,本年度は前二者を対象に関連諸機関・卸売業者,製造業者へのヒアリングをおこない,製品の流通経路や市場情報の獲得方法などアンケート調査に向けての予備情報を収集した.
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