研究概要 |
本年度は、最終年度における報告書のとりまとめにむけて、「産業集積」現象にたいする注目理由の歴史的な変遷過程をふまえた研究史の整理と、大阪府東大阪市・東京都大田区における現地実態調査をふまえた「産業集積」現象の現段階的特質の検討作業をおこなった。 前者については、「産業集積」についての注目理由が、(1)ヴェーバー・マーシャル、(2)バーノン・フーヴァー、(3)ピオリ・セーブルそして(4)現局面のポーター・クルーグマンにおいて相違しており、それが各論者による理論展開の内容を規定していることをあきらかにした。また、日本における「産業集積」現象の展開をトレースすべく山中篤太郎の業績を整理するとともに、最終報告書における研究史的整序の視点をなす「問題性」論にかかわる山中の所説を検討する作業にも着手した。 後者にかんしては、東大阪市機械金属工業の成長企業・異業種交流会を対象としたヒアリングの結果、同地域における「産業集積」の現段階的特質として,業種・業界単位での取引連関が主流であり、市場変化への対応において前提となる多様な業種にまたがる柔軟な連関が希薄であることが明らかとなった。こうしたなか、成長企業の経営者らは、自らの市場変化への対応能力を高める存在として東大阪の「産業集積」を再評価しはじめており、柔軟な連関の形成を企図している動向も確認された。また、「産業集積」現象の地域構造論的把握をめざす見地から、大田区「産業集積」の現段階的特質を把握する作業にも着手し、既存文献の収集、大田区産業振興協会へのヒアリングを行った。
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