1980年代より我が国の開業率は低下し、廃業率が開業率を上回る状況が続いている。開業率の低下傾向とともに一般の経済活動も停滞気味に推移してきた。こうした状況下において、多くの開業支援政策が用意されているが、必ずしも有効な成果を得ていない、と言われている。本研究では、次の3点に焦点を当てて、我が国の創業支援政策の成果を検証した。第1点は、こうした開業に関係する内外の既存の研究成果をサーベイしながら、我が国の開業支援政策の有効性を評価した。第2点は、開業を実現したケースではなく、そもそも開業予備軍(潜在的起業家)がどの程度存在するのかを解明した。本研究の最も大きな貢献はこの点にある。47都道府県における潜在的起業家の密度を決定する要因を計量分析した。その結果、既存の研究成果と同じく、所得、失業が増えている地域では、潜在的起業家の密度も高かった。統計上の有意性からすると、プッシュ仮説が支持された。一方、地方自治体の実施している開業支援政策は潜在的起業家の密度とは有意な関係をもっていなかった。政策提言として、クライアントにとってより有効な支援プログラムを提供すべきである、と言える。第3点は、合併による企業の誕生(開業)と消滅(廃業)という新たな分析視点を提示し、検証したことである。とりわけ、この視点は中小企業の事業継承という死活問題を考えるときに有効となる。 こうした領域に関する内外の研究成果をみると、その分析方法や分析対象は実に多くある。本研究では、そうした分析方法や分析対象を紹介することも我が国の開業問題を考察するときの一助になるということから多くめサーベイをも試みた。
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