長野県伊那市の2つの農業集落の農家実態調査を行った。これらの農業集落については、すでに1977年と1989年の2回、同様の実態調査を行っており、今回は3回目になる。調査により各農家の農業経営の状況、世帯員の農業及び兼業の就業状況、社会保障の状況などについて、これまで行ってきた調査結果と、比較検討し、この間の変化の状況を明かにした。その結果、農業経営の長期的な衰退状況に大きな変化はないが、農家世帯員の就業状況についてこれまでと異なった動きが微妙に出ていることが確認された。 この動きは、農外の就業状況に関連して起こっている。長期にわたる経済の停滞、深刻な失業状況が「農村地域労働市場」に「溶解」現象といわれるものを起こさせてきている。これまで「農村地域労働市場」は、一定の地域的な完結性を持っていたが、それに緩みが生まれてきた。農家世帯員の就業状況、農業経営の状況を詳細に跡付けして、これらの変化の意味、変化の程度を解明し、秤量した。 「農村地域労働力市場」は、農家から農外へ労働力の流出局面が前面に出ていたが、それがわずかに弱化し、相対的に労働力の還流側面が強くなってきている。これは、農業経営を活性化させる契機としてどの程度の有効性を持つか調査分析し、また、農村が果たす失業の緩衝機能について、今日どの程度の機能を残しているかについても調査分析することができた。 最後に、こうした農村に生じている新しい動きについて、農業インターン研修生及び「農業退職者の会」の実態調査を行い、新しい動きが農業生産の担い手層確保について有効性と限界について実証分析を行って、農村が今後どのように変化していくかについて農村就業者の実態分析から明かにすることができた。
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