アジア通貨危機後の国際経済秩序における大きな変化は、それ以前の1980年代後半から急速に進むリージョナリズムの動きが東アジアにおいて加速し、80年代から論議されてきたリージョナリズムが文字通り世界的な動きとなったことだといえる。しかし、他方で、2001年9月に起こったアメリカ同時多発テロの影響は、軍事力において世界的に圧倒的であるアメリカが国境の枠を越えて反テロの報復戦争を推し進め、国際社会がこれに追随していることである。この動きは、20世紀の末に推し進められてきた国際秩序に新しい課題を与え、アメリカの一元的世界支配の様相を呈している。しかし、こうした国際政治の世界での動きにも拘わらずアメリカの国際収支は依然大きな赤字を続けており、国際経済の枠組みは大きな不安定性の中にある。リージョナリズムの動きはそうした不安定性を回避する一つの手段としても大きな意味を持っており、今後も進むものと思われる。 アジア通貨危機の教訓は、一般的に通貨危機に陥った国や地域の構造改革に焦点が当てられているが、同時に東アジア地域での地域協力の大きな契機になった点が重要である。地域協力に通貨危機の教訓を見るという視点が重要であるといえるだろう。こうした側面を中心にして、今後の研究を深めていくことにしたい。
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