前年度で検討した今回の通貨危機の原因・教訓等を勘案すると持続的な経済成長を可能とする安定的な経済・金融システムを構築するためには、(1)各国レベルでの国内的な取り組み、(2)国際金融システム強化への国際的な取り組み、(3)アジア域内での地域的な取り組み、という3つのレベルからのアプローチが必要と調査によって明らかにしている。また、アジア各国が通貨・金融危機後の経済困難を克服する過程で、地域協力の重要性についての共通認識がアジア域内において醸成されてきている。 本研究では、こうした様々な国内的及び国際的な取り組みについてレビューし、今後更に取り組むべき施策等について提言を行った上で、前年度でであまり議論されていない地域的な取り組みに焦点をあてて議論、提言を行っている。 さらに、アジア諸国における産業高度化の連鎖の過程で、域内に密接な貿易・投資関係が重層的に発生し、アジア企業の国境を超えた調達・生産・販売のネットワーク構築が進展している。その結果、アジア経済はこれまで経験したことのない相互依存関係に到達している。また、モデルによるシナリオ分析を通じて、今後東アジアにおいては他の地域に比べて高い経済成長が続くことが予想され、アジアの貿易域内依存度は今後も高まることがシミュレーションによって示している。 最後に、本研究は、アジアに構造変化をもたらした要因として、「グローバル化」、「市場経済化」、「惰報化」の三つを指摘している。
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