1、インドネシアの「県別」の地域所得データを用いて、タイル尺度により1993年から1999年の県間地域所得格差を計測した(石油・天然ガス部門を除く)。また、秋田(研究代表者)が開発した地域所得格差の2段階要因分解式を用いて県間所得格差を地域間格差(スマトラ・ジャワ・カリマンタン・スラウェシ・その他地域間の格差)、地域内州間格差、州内格差に分解し、総地域所得格差の要因分析を行った。この分析結果によると、1997年時点で、総地域所得格差の50%は州内格差によるもので、一方州間格差は43%、地域間格差は7%であることが分かった。この結果は、従来使われてきた「州別」の地域所得データでは地域所得格差の分析には限界があることを示している。また、金融危機以前(1993-1997年)については、主に州内格差の増加により総地域所得格差は増加傾向にあったが、金融危機以降(1997-1998年)はジャワ地域内の州間格差の減少により総地域所得格差は大幅に減少している。金融危機は、建設業・金融業・非石油ガス製造業を直撃し、これらの産業に大きく依存するジャカルタ、西ジャワ州やジャワ地域内の都市部の経済に大きな影響を及ぼしている。 2、一人当り所得がほぼ同水準(購買力平価による所得)の中国についても市・地区別所得データ(インドネシアの県別所得データに対応する)により同様の計測を行い、地域所得格差に関する中国とインドネシアの比較分析を行った。中国の総地域所得格差はタイル尺度によると0.235(1997年)であったが、この内の64%は省内の格差によるもので、省間格差は10%、地域間格差は26%であった。インドネシアの県別データによる総地域所得格差(0.287)と比較すると、中国の総地域所得格差は若干低いものの、インドネシアに比べて地域間の格差(東部・中部・西部地域間の格差)が大きいことが分かった。
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