インドネシアの州別のGDPデータを用いて、変動係数により1993年から1999年までの州間所得格差を計測した。また、州別・産業別のGDPデータを用いて、変動係数の産業への分解式により要因分析を行った。州間の格差は、石油・ガス部門を含めた場合、金融危機以前までは引続き減少傾向が見られたが、石油・ガス部門を除いた場合には、逆に若干の増加傾向が見られた。金融危機以降については、石油・ガス部門を除いた場合も、減少傾向が見られる。産業別データによる州間格差の要因分析によると、第三次産業から得られる所得の格差は、第一次、第二次産業と比べ大きく、また第三次産業は総所得の約50%を占めているため、地域間格差の多くを説明していることが分かった。また、第一次産業の地域間格差は拡大しているのに対して、第二次産業は減少傾向にある。これは、工業化に伴い第二次産業が空間的に拡散する過程で、第一次から第二次産業への資源の移動が工業化の比較的進んでいる地域から順に起きていることを示している。 マレーシアと日本も、同様の手法を用いて地域間格差の分析を行った。日本については、1955年時点では、第二次産業の格差が最も大きく、次に第三次、第一次産業が続くパターンであったが、1959年に第一次と第二次産業が逆転し、2000年時点では、第一次、第三次、第二次産業の順になっている。工業化が進行する過程で第二次産業が空間的に拡散し、第一次から第二次産業への資源の移動が工業化の比較的進んでいる地域から順に起きていることを示している。日本は、第一次産業を海外に依存しており、第一次産業の地域的な特化が進んでいる。1970年代以降、第一次産業の地域間格差は、非常に大きな値を示している。マレーシアについても同様のパターンが見られるが、発展段階を反映して、現時点で第一次産業と第二次産業の変動係数はほぼ同水準の値を示している。
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