戦後日本の紙・パルプ産業における大企業と中小企業の競争と併存の歴史的な経緯や実態、要件などの分析、解明を目的として、大企業と中小企業の経営実態を出来るだけ個別的、かつ実証的に分析すべく、未だ研究の手薄な中小企業や中小工場に重点をおきながら文献資料や雑誌資料などの渉猟、査読をおこなった。また、大企業と中小企業のモザイク的な競争と併存の要件として、技術や市場の歴史的なあり様などについても、関連資料などの検討をおこなった。この他に、紙・パルプ産業と関連する紙加工業や流通業、機械製造業などでの企業活動についても資料の査読や検討を併せておこなった。それとともに、今年度が研究最終年であるため、研究成果報告書の執筆に先立ち改めて研究上のフレームワークや論理の再検証などにも努めた。 そうして当該産業での大企業と中小企業の競争と併存には、第二次世界大戦後における紙・パルプ企業間での競争の激化と、その要件としての技術の発達、革新や市場の拡大、多様化などあったのに加えて、従来一般に半ば通説として認識されてきた大企業による規模や範囲の経済性の追求だけでなく、中小企業を含めて企業ごとの規模や範囲の最適経済性の追求が企業経営の論理として存在、作用していることなどを明らかにした。また、中小企業の場合は、その際に特定地域での当該産業や関連産業の集積が大企業の場合よりも経営上でより重要なプラス要件になっていることなども解明した。これらの知見を含む研究成果は、今年度3月に研究成果報告書としてまとめた。
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