本年度においては、第一に、戦前期の土木建築業に関する各種の統計類を網羅的に収集し、それを整合的に整理し、相互比較が可能なものにすることに重点をおいた。特に、中央・地方財政における土木費関係費目(広義・狭義)の比較、営業税・営業収益税関係統計による請負業者数と国勢調査・地方職業統計による請負業者数の比較等について、ほぼ作業を終えた。第二に、主要請負業者について社史・営業報告書・業者名鑑類や経営者の伝記類等を用いて業務内容の推移を把握し、土木建築需要のあり方と対応する営業方針の諸タイプを整理するとともに、採用している土木建築技術の変容と下請関係の変化について分析した。第三に、府県の公共土木事業の入札関係資料を利用して、地方自治体の土木工事発注方針の諸タイプ(少数の大規模工事として発注するか、多数の小規模工事として発注するか、あるいは地元業者を重視するか、大規模業者を重視するか等)と各階層の請負業者の営業方針の相互関係について検討した。第四に、土木建築業界の政策要求運動について検討し、公共事業入札方式への請負業者の階層別の利害差を確認した。また、業界諸団体の協調・対抗の一事例として、労働者災害扶助法の制定過程に関する一論文をまとめた。
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