平成14年度においては、平成13年度の学術振興会特定国派遣による7月11日より10月10日までベルギーでの在外研究において収集・調査した15〜16世紀ネーデルラントの穀物流通にかかわる未刊行史料およびこれまでの収集・調査した未刊行史料を基にスヘルデ、レイエ河流域における穀物流通の広域化の進展を分析するための価格データベースを用いて、地域市場形成における中心都市の役割に関する分析を進めた。また、平成14年10月にカリフォルニア大学バークレー校Jan de Vries教授を招聘し、17世紀オランダの先進性に関わるセミナーを開催、17世紀ヨーロッパ経済におけるオランダの中心性に関する討議・検討を行い、経済の中心性獲得における情報の重要性、とりわけ、中心地における情報の公的化、中心都市市場における公開性と中心からの情報波及の重要性について意見を交わした。この討議をふまえ、15〜16世紀低地地方の価格データベースを基にした地域市場の形成に関する分析に新たな視点と手法を加えることとし、平成14年度10月に公刊する予定であった著書および論文の刊行を延期し、最終年度平成15年に刊行することとした。また、これまでの研究の結果、対象事象を増やした史料調査が必要となり、平成15年度の日本学術振興会の特定国派遣を申請、採択され、現在は、刊行を延期した著書および論文の修正、新たな史料調査の準備を行っている。
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