本年度は研究課題に即し、海軍省の官営事業の特色と産業化に果たした意義と肥前国松浦川水運の発展・衰退と港湾の整備に関する史料の収集に努めた。中央所在の史料では防衛研究所図書館の海軍史料のうち、公文原書・公文類纂については補充的収集を行い、主として公文備考の中の関係史料の収集に努力し、国立公文書館の海軍省年報・太政類典等の関係史料を収集した。また早稲田大学図書館、慶応義塾図書館、東京大学中央図書館・経済学部図書館等の史料所在調査をおこなった。 地元史料では長崎県立図書館の地誌史料や県庁文書から史料を収集し、佐賀県立図書館の明治期行政資料の再調査を行い、唐津市所蔵の藤田家文書の解読を行った。民営炭坑は石炭問屋の掌握下にあったので問屋史料の発掘に努めたが、新たに見い出すことはできなかった。 松浦川石炭輸送についての論文を執筆中である。防衛研究所図書館所蔵の公文類纂および公文原書で発見した史料を基礎とし、藤田家文書および峯家文書を補助的に使用しながら、輸送管理方法を解明し、与えられた石炭生産高から実態を推測していく方法を採っている。問屋支配下の民営炭坑の輸送については全体を明らかにすることが困難で、藤田家文書中の長帳から藤田家経営の炭坑の輸送について個別分析を行いつつある。
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