研究概要 |
本研究は,ワグナー(Robert F. Wagner)上院議員による決議(S.Res.125,Apri117,1939)にもとづき上院銀行通貨委員会(委員長ワグナー)が,財務省・商務省・連邦準備制度・連邦預金保険公社(FDIC)・金融復興公社(RFC)・各州銀行監督局・アメリカ銀行協会に対して実施した,通貨金融制度に関するアンケート調査に関する資料の収集・分析を主要な課題としている。 1.昨年度に引き続いて,本年度も通貨金融制度アンケート調査に対する各種機関・諸団体による回答を中心とする史料を,アメリカの国立公文書館や連邦議会図書館,および国内の図書館等で調査・収集する作業を行った。 2.またアメリカの戦時金融および戦後通貨政策に関する内外の文献を収集・検討を進めるとともに,当時の経済専門紙や雑誌を調査し,ワグナー委員会が推し進めようとしていた通貨金融制度改革に対する世論や業界などの反応を分析してきた。さらにまた,すでに収集した調査史料(連邦準備制度やアメリカ銀行協会,復興金融公社,各州銀行当局などの回答)と,国内外の諸研究との突合せ作業を進めた。 3.以上の史料調査・分析からこれまでに判明したことは,第1に,ワグナー委員会の通貨金融制度改革構想は,同じくワグナー法(全国労働関係法)として結実したニューディール型社会体制を実現する上で不可欠のものと構想された。しかし第2に,近年の研究では,ニューディール期に追及されたヨーロッパ型の労資関係が戦後1940年代末に変化し,定着したとの主張が有力になりつつある。そこで問題は,ニューディール期に成立した通貨金融システムが戦後体制を支えた事実からみて,生産システムと金融的上部構造との関係の歴史的展開を整合的に把握することである。
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