研究概要 |
本研究は,ワグナー上院議員による決議に基づき上院銀行通貨委員会が,財務省・商務省・連邦準備制度・連邦預金保険公社・金融復興公社・各州銀行監督局・アメリカ銀行協会に対して実施した,包括的な通貨金融制度に関するアンケート調査を収集し,分析することを主要な課題とした。最終的成果の取りまとめに際して、John A. James(ヴァージニア大学)、Hugh Rockoff(ラトガース大学)、Richard Sylla(ニューヨーク大学)の3氏から貴重なコメントを得た。 1.以下、本研究の概要を示す。ニューディール銀行制度改革の基盤の上にその後の連邦準備政策は、具体的にどのような問題に直面したのか。1940年の「全国銀行通貨政策」調査の顛末を、連邦準備制度の信用政策に焦点をあてて分析した。その結果、第1に、1935年銀行法による連邦準備制度理事会の権限の強化は、同理事会よる「銀行統合」論を提起した。すなわち、「連邦準備が通貨信用管理の主たる責任」を再認識し、州法銀行や個人銀行を含めた、「銀行検査や規制機能を統合・整理」することを議会に要請した。「銀行統合」論は二元銀行制度の否定に繋がりかねず、財務省・通貨監督官や州法銀行関係者との激しい論争を呼び起こした。 2.第2に、旧来より「スペンダーズ」と見なされてきた連邦準備制度理事会議長エクルズは、1937年のリセッション以降、連邦準備政策の重点を反インフレ的方向に転換したが、それは銀行規制・監督体制の全面的な再編と不可分に結合していたことが解明された。 3.最後に,ワグナー委員会「全国銀行通貨政策」調査の分析から、(1)連邦準備制度と財務省という銀行・通貨管理当局の二元性から重大な問題が発生し、それは連銀の独立性として今日へと継続する問題であったこと。(2)それはまた、管理通貨制度の発展過程で出現した問題であり、とりわけ連邦準備制度に「インフレーションの管理」のみならず、新たに「価格メカニズムの歴史的役割の復活」、「自由市場経済の復活」の問題を提起したことである。
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