平成13年度には、外部企業統治について有効な実証を行なうためのデータの入手が困難であることが判明した。そこで、この困難を克服するために、戦後活躍した業界人の方々へのヒアリングを実施した。ヒアリングでは、かなり有益な情報が得られた。その結果、次のような5つの仮説を考えた。 (1)企業融資に関しては昭和30年代から昭和40年代までは、「限界資金供給者」としての保険企業という評価は、大きく間違っていない。つまりガバナンスの主たるプレーヤーではなかった。 (2)産業企業の資金需要が旺盛な時期においては、旧財閥系企業および大手企業が窓口になって、融資の割り当てを行うほどであった。しかし産業企業のCorporat managementに保険会社が深く関与した証拠は見当たらない。 (3)その後においては、保険会社の企業規模などによって、ガバナンスのプレーヤーとしての行動にある程度の差が生じる。 (4)商品構成において、団体保険・企業保険のウェートが高まるにつれ、運用と販売の連携が重視され、いわゆる「政策投資」が大きくなる。 (5)この「政策融資・投資」は、ほとんどの保険会社では、資産運用担当者の「審査」を欠いた状態で行われるものではなかった。つまり「お手盛り融資」ではなかった。 平成14年度は、生命保険会社の融資額、集中率、充足率および融資企業の系列などの情報を有するパネルデータを作成して、この仮説の検証を試みるべく努力した。その結果(1)(2)(4)の仮説については、おおむね妥当であるが、(3)(5)については、仮説を確信させるような充分な証拠や実証結果は出ていない。今後の課題である。
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