本研究は、徳島県民の北海道移住と九州出漁の歴史的過程を比較史的に分析し、同郷あるいは地縁的集団がもった「規制力」や「同郷意識」に注目し、それが移動・移住過程および定着・入植後において、人々の行動にいかなる影響を与え、企業家的発展を生み出すエネルギーとしてどのように機能したのか、という点について解明することにある。 本年度は、北海道移住関連資料の調査と収集を実施し、その整理と分析を行った。なかでも北海道での藍作経営を企図して篠路村に興産社農場を設立、のちに北海道セメント、函館鉄道株式会社、渡島水電株式会社(のちの函館水電)などの企業経営に関わった阿部興人、北海タイムスを創刊した阿部宇之八らの日誌・書簡等を含む阿部家文書と、蜂須賀農場を創設し、近代産業の創設に華族として関わった蜂須賀茂韶の関係史料を、北海道立図書館、札幌市史編纂室、徳島県立文書館、徳島県立図書館、徳島大学地理学教室などで調査・収集した。とくに、徳島県立文書館が所蔵する阿部家文書(マイクロフィルム)については、「阿部興人日記」を中心に解読をはじめ、興産社関連の記述部分をパソコンによってデータベース化する作業に着手した。また、徳島大学の平井松午氏が撮影した「蜂須賀農場経営関連史料」のフィルムの一部をスキャナーで読み取り、史料画像をデジタル化する作業をも行った。さらに、当該テーマに関連する市町村誌や企業社史類の調査を行っており、次年度は本年度の収集資料をもとに、北海道移住者から輩出した企業家について本格的に分析・研究を行う予定である。
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