平成13年度は、日米の金融危機に関する日米研究者の討論の成果であり、モラルハザードも大きな問題として議論されている論文集の日本語訳書の出版、世界的規模で見た金融制度とモラルハザードの調査、とりわけ、1990年代に東欧の旧社会主義諸国において生じた典型的なモラルハザードによる膨大な財政負担の問題の分析、金融市場におけるモラルハザードと法的規制の関係に関する研究、最近の巨大銀行合併の誘因として考えられる規制監督強化への対応としての「Too-big-to-discipline-adequately (TBTDA)」動機の日本における実証研究を推進した。 その結果、各国の金融市場におけるモラルハザードの規模は、金融制度が急激に変化するときには法的規制は社会的・歴史的制約から有効に機能し得ず、銀行の損失が公的負担となる事例が世界的に共通に見られ、財政負担増加の主要な原因となっていること、日本の事例は広く世界的視野で見た場合には一般的な現象の一つであるが、経済の規模が世界大2であるだけにその財政損失も80〜90年代に生じた世界の金融危機の中でも最大の規模に上っていること、などが明らかになった。 この問題を解決する方策についても研究を進め、結局政府が「時間的非整合性問題」の発生を許さないよう、一旦決定した方針は貫徹する姿勢を貫き、情報公開による透明性を高めて、市場の評価を通じて金融機関が選別される枠組みを作り、破綻金融機関の株主と経営者が責任をとるシステムにを作り上げる必要があること、等が明らかになっている。
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