本研究では、将来の国民所得や地域所得、地域格差の是正等の長期目標を実現するために、社会資本の整備について、いつ、どこで、何に対して、どのような規模で行われるのが望ましいかといった問題を、実体的な側面から公共投資の地域間、分野別の配分政策について論理的、実証的分析を行い、長期的な戦略として見たときの望ましい社会資本の整備政策はどのようなものかについて研究している。特に、都市計画、公共交通、環状道路等の社会資本整備の在り方について、東海地区における事例研究を含めた分析を行っている。 この中で、従来の「国民所得の最大化」と「地域格差の是正」に続いて、「地域住民の厚生の最大化」へと社会資本整備の基本理念の転換を図ること、それに伴って、整備手法の転換が必要であることが明らかにされている。その際の新たな整備方法として、PFIや開発利益の還元、都市計画等における住民参加などが提案されている。 また、維持補修費用と更新費用の合計の(公的固定資本形成+維持補修費)に占める割合が、2020年度には2000年度の20%から52.4%に増加するという推定結果を得ている。これをもとに、新規投資と同時に、既存の社会資本の維持更新についても問題視している。 地方分権の進行によって、公共投資への国のコントロールが及ばなくなるにつれて、短期的な景気浮揚の手段として公共投資に期待して、1〜2年の国民所得への効果(乗数効果)で評価するのではなく、将来のための社会経済基盤の構築という視点からなされるべきであることを示している。 本研究は、公共投資の最適配分についての理論研究を実際の社会資本の整備過程に適用し、長期的に展開過程を評価する試みである。我が国の社会資本整備の展開過程の評価研究は、これから社会資本整備が本格化する中進国・発展途上国にとっても貴重な資料になるであろう。
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