事象研究の問題の一つは説明変数と被説明変数の中に人工変数(generated regressor)が含まれていることである。状況によって人工変数は説明変数と誤差項との相関、誤差項の分散不均一性や誤差項の系列相関を引き起こす。事象研究において補助方程式を推定するための票本数と構造方程式を推定するための票本数がかなり違うケースがある。そうするとある条件が満たされたら構造方程式を推定するために、理論上、漸近てきに操作変数法が最小二乗法より良い。問題になるのは操作変数の選択と最適な操作変数の存在である。今年度、前者の問題を分析した。操作変数の選択を調べるのに、モンテ・カルロ実験を実施した。モンテ・カルロ実験によると、Durbin氏が1950年代に提案したように、問題の変数(人工変数)の順位を操作変数として使うと、最小二乗法や他の操作変数を利用した場合に比べてこの操作変数法のバイスがかなり大きいケースがある。この結果を説明するために、操作変数(問題の変数の順位)と誤差項との相関が残る可能性が考えられる。最近重視されている弱い操作変数(weak instrument)の議論(Staiger-Stock(1997)等)で対処できることを調べている。補助方程式を推定するサンプルを二つの十分なサンプルに分けることができる場合、一つのサンプルを利用し、人工変数を作成し、もう一つのサンプルを利用し、人工変数の操作変数を作成することができる。二つのサンプルが独立であれば、操作変数は適切になる。この場合、Durbinの操作変数法に比べて、バイスが少ないが、仮説検定に関して、問題の変数と誤差項との相関を無視する最小二乗法や一般最小二乗法より必ず優れているというモンテ・カルロ実験結果にならない。研究成果の一部を2002年10月に広島大学で開催された日本経済学会年次大会で報告した。
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