本研究では、総務庁を中心に整備されてきた指定統計の地域メッシュ統計を利用して、信用金庫の営業地盤に関する研究を行った。先ず、日本全土を格子状の狭い空間領域に分割し、各々の格子内に存在する企業数や競合する金融機関数等の経済情報を重ねて、信用金庫の置かれている経済環境をチェックした。即ち、各信金の店舗が配置されている地点を特定し、その周辺の企業数等を集計する。そして、それらを合計することによって、各信金の営業地盤の優劣が決定されるといった方法である。こうした方法によって、従来の研究、例えば都道府県の単位面積あたりの店舗数を代理指標とした分析の粗さを回避することが出来る。 分析の結果、大都市圏をはじめとする営業地盤のタイプによって、資本金規模でみた「主たる取引企業」グループが大きく異なること、特に営業地盤の豊かさが後退するにつれて対象となる企業の資本金も総じて小さくなっていくといった特徴がみられた。また、競合先についても、営業地盤の豊かさの後退とともに、より下位業態の金融機関との競合が強まっていくといった結論が得られる。こうした一見常識的ではあるが、これまで計数的には証明されてこなかった事実を、データを基に明確に指摘することが出来た。 信金同士の合併に関する分析では、90年代末の合併においては不良債権や自己資本比率の面で合併側と被合併側とでは優位な格差は存在しなかった。これが2000年代以後になると、両者の間では営業地盤に関する格差は小さい反面、不良債権に関する格差が大きくなっているといった結果が得られる。このことは、合併が行われた後の店舗配置の見直しをはじめとする経費の効率的な使用・節約が、その後の経営展開に極めて重要であることを物語っているといえる。
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