破綻した金融機関の整理時に、破綻銀行の受け皿となる銀行の利害関係者に生じ得る影響、とりわけロス・シェアリング(損失分担)ルールが導入された場合に起こり得る利害関係者間の富の移転について、不確実性下の請求権価値評価の基礎理論であるオプション評価理論に従って資本市場での評価の視点から検証することが、本研究の目的であった。研究初年度である平成12年度は、上述した基礎理論の観点からの理論モデルの構築と実証用の計量モデルの導出、そして必要なデータの収集可能性に着手した。 実証に重点を置いているため、データの利用可能性を詳細に検討したが、問題の性格から、利用可能性は必ずしも高くなく、その結果、計量モデルにも独自の工夫が必要であることがわかった。また、この1年間に、生命保険会社、損害保険会社で破綻する事例がいくつか見られたので、関連するデータを収集し、新たな分析対象とした。とくに、更生特例法による処理の場合、公開されるデータが多く、分析材料として有効であることがわかった。計量の具体的方法としては、数理解析ソフトのテストに着手し、解の収束方法等について、この問題特有の問題点などを見出した。 本年度は、理論・計量モデルと利用可能なデータとをつき合わせて、本格的な実証研究を完成させることとしたい。
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