本研究は、金融政策が金融機関行動の変化を通じて資源配分に及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。そこで、銀行のバランスシートと金融政策の変化に対する貸出の反応に関する理論的な整理・分析を行い、その仮説を検証した。具体的には1975年から1999年の期間における日本の全国銀行のバランスシートに関するデータを収集・整備し、金融政策の変化に対する銀行の貸出増加率の反応が、銀行の規模、流動性資産比率および自己資本比率に応じてどう変化するかを検証した。この結果、規模が小さいほど、流動性資産の割合が低いほど、また、自己資本比率が高いほど、コールレートの変化に対する貸出の変化がより大幅であることを見出した。業態別に見ると、主要行は流動性資産やBIS比率による違いが顕著であり、地銀は会計上の自己資本や不良債権による違いが顕著である。時期別にみると、引締め期と金融危機期には流動性資産による違いが顕著であり、緩和期には自己資本による違いが顕著である。貸出先の業種別に見ると、製造業等では自己資本による違いが見られるが、不動産業等では自己資本による反応の違いは見られない。これらの結果は、金融政策の貸出経路の存在を示唆しており、特に銀行の自己資本比率が何らかの外生的ショックによって低下した場合には、金融緩和策の効果は減殺されることを示している。また、金融政策が資源配分に及ぼす効果も無視し得ないこと明らかになった。
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