研究概要 |
本研究は、ドイツ版NPMとして「新制御モデル」(Neues Steuerungsmodell, NSN)型行財政改革に注目し、モデルの理論的背景、自治体における改革の進展状況、改革上の課題等を検討するものである。本研究期間内では、ドイツの自治体や研究機関等での調査・資料収集をもとに、以下のような研究成果を得た。 1.各自治体の改革の動機は主として自治体の財政状態の改善に置かれているものの、このモデル自体は行政の合理化・近代化に重点を置くものであり、改革の実態をみても財政の改善に直接つながるものとはなっていない。むしろ、自治体における地域戦略性の強化、対住民サービスの改善、事務事業の成果の点検とそのフィードバック、機構の分権化、という点に改革の意義があると思われる。 2.この改革はしばしぱ、ドイツの法治国家制との矛盾を生じがちである。特に自治体歳出の25%を占める社会扶助事務に見られるように、法律に義務づけられた事務の執行に関して、自治体の裁量権が制約されている下での改革には困難もある。こうした状況に対して各州政府および連邦政府は法律に実験条項を加え、時限的なパイロットプロジェクトを行うことで、将来的な法改正に繋げることを試みている。 3.改革モデルの理論的基礎として、新制度学派による概念装置としての取引費用論、プリンシパル・エージェント論等が採用されている。こうした理論に遡って考えると、改革は行政執行面・歳出面のみに限られず、歳入と歳出の牽連性に及んで行かざるを得ないであろう。従って今後の改革課題としては、市町村の税制改革が不可避となっていくものと思われる。
|