わが国の経済は、短期的には景気回復をはかる必要があるが、中期的には行政改革、財政改革などを通じて産業構造、経済構造を改革し、長期的には高齢者の福祉を含めたセーフティネットの充実した、維持可能な安定した社会を目指す必要がある。本研究は、金融市場を組み入れた重層世代一般均衡モデルを構築し(理論分析)、次にこのモデルに基づいて応用一般均衡分析の手法によりシミュレーションを行って、さまざまな政策シナリオの効果を定量的に検討することを目的としている。 3年間の研究期間の初年度にあたる本年度は、以下の4つの作業を進めた。(1)わが国の経済が、バブル経済の崩壊以後、自立的な成長過程へ円滑に移行できず、その潜在力を十分に発揮できない状態が続いている原因を検討し、Toward a Self-sustained Growth : Lessons from the Bubble(日本経済再生への課題)としてEROPA研究会で口頭発表した(2000年7月)。(2)高齢化の進展により家計の貯蓄行動がどのように変化するかを、所得、利子率、価格、寿命の不確実性の下で検討し、貯蓄経済研究センター研究会その他で「不確実性の下での貯蓄行動」として報告した(2001年2月)。(3)一般均衡の枠組みで不完全競争を取り扱う際の問題点を検討し、成城大学『経済研究』に発表した。(4)基準均衡データ・セットとしてのわが国の社会勘定行列SAMを作成するために、Kehoe論文の検討を始めた。
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