本研究では日本企業の資本コストをCAPMおよびファマ=フレンチの3ファクターモデルにより測定し、これを産業レベルで集計化し、日本産業の資本コストを解明した。これにより日米企業のリスク構造の差異が明らかになり、また法人税率、資本利得税率の政策変更が企業の新規投資の採択基準である資本コストへ与える政策インプリケーションが明らかにされた。さらに、日米に共通のリスク要因による説明をおこなう資産価格理論を用い、リスク差異の指摘のみならずリスク要因分析も行った。これにより、経済のアグリゲート・リスク、金融市場の実物経済との関連性、および株式要求利益率との関連性が統一的な見地から明らかにされた。一方、マクロ経済モデルにより、日本の公的資本が民間資本よりも生産性が低く、さらに東京と他の地域で収束が見られないことが、マルコフ過程に基づく2セクター一般均衡モデルにより明らかにされ、民間企業の資本レンタル料したがって自己資本コストに関する重要な発見が行われた。さらに、消費に関する経済アグリゲート・リスクと株式期待利益率との理論関連性を消費者最適行動の見地から行うため、EULER条件検定を日本の家計消費5分位データにつき行った。ここでは、資産価格データにおけるリスクプレミアムと消費者の危険回避度の整合性、そこで、資産価格データにおけるリスクプレミアムと消費者の危険回避度の整合性、すなわちエクイティープレミアムパズルが解きほぐされる。総務庁家計データより、収入が高い5分位サンプルについて資産価格理論の妥当性がより強いことと、ほぼすべての階級について危険回避度が合理的な範囲にあることが解明された。
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