最終年度の本年は、アメリカ・マネジリアル・マーケティングの歴史的研究を位置づけるために、ショー、バトラー、クラーク、ホワイトといった成立期マーケティングにおける顧客志向の展開についての研究をすすめた。その結果、明らかになったことは、成立期マーケティングの議論の中心は中間商人の排除ないし活用をめぐる問題であって、顧客志向ではなかったという点、しかし、すでに顧客のニーズを出発点にマーケティング計画を考える必要性が指摘されている点である。 また、アメリカ・マネジリアル・マーケティングの特質の中心は顧客志向にあるという点から、現代における顧客志向の展開形態についての調査研究を下記のテーマを設定してすすめた。これは、顧客志向に関する学説の再検討を通じて、マーケターと顧客の関係の視点から、4つの類型を設定し、それぞれのタイプについてケースをもとにその特徴を論じたものである。 1 市場創造型のマス・マーケティング マーケターが能動的に提案して市場を創造するかたちで顧客志向を実現する 2 仮説検証型のマス・マーケティング マーケターが能動的に顧客のニーズに関する仮説を立て実践を通じて検証する 3 声を聴く型のマーケティング マーケターが顧客の意見を日常的に収拾してマネジメントに生かす 4 顧客協働型のマーケティング 顧客自らが参加しマーケターと協働して自らのニーズの実現をめざす 以上の研究については、同文舘から刊行予定の『顧客志向のマス・マーケティング』に収録される予定である。
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