リスク管理の中心課題であるリスクヘッジは各種のデリバティブを利用した手法が主流で、連続時間の問題として考察されている。一方、消極的リスクヘッジであるインデックス・ファンドも投資信託で重要な地位を築いているが、静学的なフレームワークに限定されている。本研究では離散時間で得られた結果を連続時間で考察・拡張した。そのために、基礎となる確率過程、各種証券価格を記述する確率微分方程式の同定、目標とする指標の設定、指標との偏差を表すトラッキングエラーの構成と最適化問題の定式化などを解決しなければならなかった。本研究では、モデル構築の準備的作業に多くの努力を振り向け、関連論文を中心とした各種の情報の収集と専門家たちとの議論、試行モデルの作成に研究費の大半を費やした。とりわけ、連続時間の問題を解決するにはかなり大規模なNP完全な整数計画問題を解かなければならないが、効率的なアルゴリズムが知られていない。そこで、発見的方法の1つとして遺伝アルゴリズムを利用した解法を当研究室の大学院生の協力を仰ぎ、具体的に開発した。その成果を経営科学国際会議で報告するとともに、いち早くワーキングペーパーとして公表し、世界の研究者からの反応を見た。その結果を参考にして、ワーキングペーパーを改良し、海外の学術雑誌に論文として投稿し、現在、レフェリーの査読結果を待っている段階である。また、研究過程で獲得した数々の情報に基づき、経営科学やオペレーションズ・リサーチとの接点を解明する意味で最適化問題を中心とした「経営科学入門」の書物と、連続時間の問題を中心に解説した「金融工学入門」の2冊の書物を執筆し、公刊した。
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