本研究は、製造業に比して研究の遅れてきた小売業の海外進出について、その進出ダイナミズムの解明をめざしたものである。筆者は、すでに百貨店やGMSあるいはスーパーマーケットといった業態の海外進出に関する研究蓄積を有している(川端基夫、2000)ため、本研究ではそれ以外の専門店業態および外食産業について検討した、これらの業態は、百貨店やスーパーと異なり、扱い品目の幅が狭く、またサプライ・サイドと密接な関係にある。このため、製造業の進出と関係した独特の進出ダイナミズムを有している。 筆者は、本研究遂行のために、まずは基礎資料である進出企業リストの作成に着手した、これにより、従来明らかでなかった専門店・外食業態の進出実態がかなり把握できた。その上で、第1段階として主要な進出事例である、紳士服専門店、眼鏡専門店、書店について日本本社および進出先で調査を行った。当初は婦人服専門店を対象に含める予定であったが、それらは百貨店、GMSの進出と緊密な関係にあり、やや正確を異にすることから割愛した。第2段階は主に外食産業に関する事例調査を行った。ハンバーガーチェーン、牛丼チェーン、回転寿司チェーンなどを対象に、本社と現地で聞き取り調査を行った。 今回の2年間にわたる研究により、(1)専門店業態、外食業態の海外進出実態(出店データベースの構築)、(2)それらの進出ダイナミズムにおける「サプライシステム構築」要因および「技術移転」要因の重要性、(3)今後の課題、などが明らかとなった。今回は予算や時間の関係から海外調査が十分にはできなかったが、今後も研究を継続していきたい。
|