本研究は、これまで分析が遅れてきた専門店業態の小売業における海外進出を検討したものである。これまでの小売国際化研究では、百貨店やGMS、SM、CVS、そして専門店や外食など多様な業態の海外進出が一括して扱われる傾向がみられた。しかし、それらは品揃えの幅やメーカーとの関係などが異なっており、いわば国際化の前提条件が大きく異なるといえる。また、これまでの研究では、総合品揃え型の小売業である百貨店などと異なり、限定品揃え型の専門店は、生産機能を内包しやすい特性があり、それゆえ標準化によるグローバル化の可能性が高い業態とも見なされてきた。しかし、専門店業態の分析については、部分的にしか(たとえば向山1996)手が付けられてこなかったのが実態で、その海外進出の全容すら明らかにされてこなかった。 そこで本研究では、まずは専門店業態の海外進出の歴史や進出の全体像・概要を把握し(データベースづくり)、さらにいくつかの事例に関してその問題点を検討することとした。そして、実態として、どのような戦略で進出が行われているのか、標準化はどこまで進んでいるのか、どのような経営課題に直面しているのか、といったことを明らかにした。 本研究では、衣料品専門店で38社、それ以外の業種で34社の進出事例を確認したが、市場開拓のための出店はアジアに集中しており、欧米への出店はアンテナショップ的なものが多いことが判明した。また、海外では、立地選択の失敗、商品調達のコストの高さ、家賃の高さ、などが問題とされていた。それらのことから、専門店の海外進出には、立地(出店物件)の適切な選択、生産機能とのリンケージの強化、家賃コストの低下(粗利益の確保による相対的低下)などが重要となることが判明した。
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