本研究の目的は、ストア・ブランドに焦点を当てて、ブランドの意味形成と競争の関係を考察することにある。ストア・ブランドとは、顧客の知覚空間上に形成されている店舗に対する意味の集合体であるが、顧客の店舗に対する意味形成は、店舗で提供される製品やその価格、店舗のサービスや雰囲気、それに関わる広告等のマーケティング活動を通して行われるととともに、その店舗の製品やサービスに対する評価は、他の競争する店舗との相対的関係のなかで決定されることも否めない。すなわち、店舗特性やマーケティング活動の戦略的要素だけでなく、競争相手との関係性においてもブランドの意味が影響されるのである。そこで、ブランドの意味をブランドの意味構造として、競争相手との関係性を競争構造としてそれぞれ捉え、ブランドの意味構造と競争構造との関係を見ることによって、競争構造の差異がストア・ブランドの意味形成にいかなる影響を与えているかを考察していく。 かかるような問題意識のもと、平成12年度は、以下の2項目を中心に研究を進めた。 I.文献研究による研究枠組の明確化 ブランドの意味論的研究、フードビジネス、競争戦略に関する既存研究をレビューすることによって、本研究の概念的および体系的整理を行い、研究枠組を明確化した。 II.調査枠組の設定および予備調査 本研究の主要仮説である「異なる競争構造の下では、消費者のストア・ブランドの意味解釈が異なる」に対し、調査対象として、ストア・ブランドに対するイメージが比較的安定しており、他店との比較が容易なファストフード店(マクドナルド、モスバーガー、ロッテリアなど)を取り上げ、競争構造が異なるいくつかの地域を選定し、そこでの消費者のファストフード店に対するストア・ブランドの意味解釈に関して、予備調査としてのアンケートを行った。 次年度は、その結果を踏まえながら調査枠組の再検討を行っていく予定である。
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