「伝統的チャネル関係」としての流通系列化が、抜本的な見直しを余儀なくされている。一方、寡占企業が、大手流通業者と相互対等な立場でのパートナーシップに基づいた「新たなチャネル関係」を急いで建て直すことが求められる時代になった。新たなチャネル関係は、従来の流通系列化とは異なり、寡占企業による一方的にパワー行使が容易ではなくなったために、パートナーシップ関係が強調されている製販同盟をはじめとする様々な流通イノベーションが急進展している。 果たして流通系列化は、旧い時代の名残として、変革を追い求めるべき日本の流通経路においては、ロスト・パラダイムになってしまうだろうか。一方で、製販同盟などの新チャネル関係が、流通系列化への代替パラダイムとして受け入れられるだろうか。 本研究では、以上のように流通系列化の動揺と製販同盟の進展として要約できそうな昨今の流通システムの動態を睨みながら、寡占企業のチャネル戦略のあり方を問い直した。まずは、チャネルにおけるパワーと信頼概念を中心に議論された従来のチャネル研究の成果を批判的に検討し、次にその批判的検討を踏まえチャネル政策における新たな分析枠組みを提示した。それから、この分析枠組みの有効性を確認すべく日本の流通系列化政策の代表的な企業(具体的に松下、ワールド、資生堂)を取り上げ、新たなチャネル関係の構築に向けて試行錯誤を繰り返す模様を記述した。 最後に本研究で議論したチャネルにおける理論と実践からのインプリケーションをベースにしながら、ポスト流通系列化のチャネル構築に悩んでいる寡占企業に対して、チャネル政策の実行において、流通系列化と製販同盟間の機動的チャネル資源配分を促すチャネル・ポートフォリオ戦略こそがチャネル・インタフェイスを環境適応的に調整できる戦略だという点を強調した。
|