標記研究課題に対し、平成12年度は計画どおりに研究を実施した。私自身の作業とともに、来日中のアメリカ人研究者や日本人研究者へのインタビューにより、既存研究の検討とレビューを実施した。アメリカ企業の管理職・ホワイトカラーの報酬制度に関しては、コーニングジャパン・日本GEをはじめとする在日アメリカ企業20社への調査を実施し、同制度の実態と変容を把握することができた。日本企業の管理職・ホワイトカラーの報酬制度に関しては、花王・NTT・セブンイレブンジャパン・デンソー・セイコーエプソン・マイカルなど、東京・名古屋・大阪地区の20社への調査を実施した。そして、計画されたとおり、日米企業の報酬制度の他地域との類似性を明らかにするために、アジアでの企業調査を3月に実施した。こうした平成12年度の調査をもとに、研究成果の中間まとめノートを作成した。平成12年度の研究で得られたことは、次年度研究の仮説でもあるが、つぎのとおりである。アメリカ企業の管理職・ホワイトカラーの報酬制度は変容しているが、そのポイントは市場志向、柔軟性・集団・能力志向、国際化志向であると考えられる。そして、管理職・ホワイトカラーと労働組合員の差は、いまもはっきりしている。日本企業ではアメリカ企業以上に、管理職・ホワイトカラーの報酬制度は変容しており、そのポイントは成果志向、市場志向、国際化志向である。従来、管理職・ホワイトカラーの報酬制度は労働組合員の制度と似ていたが、前者の制度変更が先行し、後者と異なるものになりつつある。両国企業の報酬制度の変化は似ているものの、日本企業の統合性、アメリカ企業の分離性という違いは、その変化にも大きく影響していると考えられる。
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