労働組合のある日米それぞれ製造業3社の調査から、日米企業の管理職・非組合員ホワイトカラーの報酬(賃金・査定)制度に関してつぎのことが見出された。1990年代、日本とアメリカの報酬制度、とくに日本の管理職・非組合員ホワイトカラーの報酬制度は大きく変更された。日本の管理職・非組合員ホワイトカラーの報酬制度の変更は、従来と異なり、ブルーカラーの制度変更に先行するものであった。また日米での変更は、両国企業が相互に学習しあった結果といえる。日本の管理職・非ホワイトカラーの報酬制度が成果指向になったこと、アメリカの管理職・ホワイトカラーの報酬制度が能力・集団・柔軟性指向を取り入れたことにより、日本とアメリカの報酬制度は幾分、類似してきたといえる。しかし、ブルーカラーも含めた日米の報酬制度を比較すると、いまもはっきりとした違いが見出される。組合員と非組合員、ブルーカラーとホワイトカラー、high performers(高業績者)とlow performers(低業績者)の報酬・処遇において、アメリカでは明確な差をつけている。一方、日本では両者の連続性がみられ、むしろあまり差をつけないことにより一体感を維持しようとしている。こうした日米間の相違の背景には、日本企業における「安定雇用のもとでの統合性integration with employment stability」、アメリカ企業での「不安定雇用のもとでの分離性segregation with job instability」という共通の特徴があると考えられる。こうした特徴は、補足的に行われた日本企業40社の調査でも同様に見出された。
|