研究概要 |
まず平成12年度は経営学における意図せざる結果の探究を行なってきた既存の研究を幅広くレビューし,大まかな学説史的見取り図を描いた.まず第1に,現代日本の経営学に見られる研究スタンスの特徴を整理する作業が行なわれた.この作業では,日本の経営学において極端な実証主義バイアスが作用しており,「意図せざる結果の探究」にとって有益な合理主義的思考法を阻害している可能性があることが指摘された.またその作業の中で,学説史の研究そのものに意図せざる結果という視点が取り入れらてもいる.第2に,アメリカ経営学から現代の日本経営学に至る学説の流れについても,方法論に注目しながら明らかにする作業が展開された.まずテイラーから始まる科学的管理法やその後のホーソン工場実験から始まる人間関係論等が,法則定立的な志向をもった「素朴な科学としての経営学」を構築する運動であると位置づけ,その後のコンティンジェンシー理論を「洗練された科学としての経営学」を構築する運動であったと位置づけた.その上で,これらの科学を志向した運動自体が戦略論の導入以来,きわめて科学として成立しがたい状況になってきていること,しかもその状況の中で日本ではさらなる理論的発展が生じ,不均衡なシステムを強調する研究が活発化し,科学としての経営学という方向性が魅力的ではなくなってきたことが示された.その結果として,意図せざる結果に注目した経営学的研究はきわめて高い研究意義をもつものであることが明らかになったと思われる.
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