21世紀初頭における企業統治(コーポレート・ガバナンス)研究の重要な課題は少なくとも5つあると、平田は見ている。第1の課題は、企業統治論の構築と拡充である。第2の課題は、企業統治の基本問題の解明であり、第3の課題は、企業統治の鍵概念の国際比較である。第4の課題は、企業統治機能の解明であり、そして第5の課題は、企業統治制度の構築である。本研究は、第1の課題と深く関わっている。平田は、第1の課題については、2001年3月、早稲田・WHUフォーラム(於ドイツ・ヴァレンダー)において、企業統治論の体系化に関する修正試論を発表した。それは、経営者問題を軸にして、11の問題領域から成っており、その成果は、"How can we formulate a theory of corporate governance?"に纏められた。平田は、本研究の拡充を図るために、第3、第4および第5の課題についても研究を進めた。1つ目は、企業統治機能(企業不祥事の抑制機能、企業競争力の促進機能)についてである。平田は、企業統治にこのような機能が本来あると信じられていることに疑問を抱き、2001年7月、経営行動研究学会第11回全国大会(於和光大学)において、これを提起し、その成果を「新世紀の日本における企業統治の光と影」に纏めた。2つ目は、昨今の日本における企業統治制度の改革についてである。平田は、2001年11月、企業統治国際シンポジウム(中国・南開大学)において、その現状と将来について基調報告し、その成果を、「日本における企業統治改革の現状と今後の方向」に纏めた。3つ目は、優れた企業統治構築の指針とされる企業統治原則策定の動きについてである。これについては、平田は、わが国でその動向があまり知られていないドイツと中国を取りあげ、その成果を「ドイツにおけるコーポレート・ガバナンス規範策定の動き」および「中国のコーポレート・ガバナンス雑感」に纏めた。
|