東証一部上場企業のうち流通業について、企業戦略と組織変革に関するデータベース化を1980年から1997年の期間について図った。日経TELECOMを利用し、各企業について戦略および組織の変革に関連のある記事のみを検索した後、記事本文の分析を行い、各変革に関する分類と記述を行った。まずそれぞれ4つに分けられた「変革タイプ」と「変革レベル」という2つの次元から、各変革を16のセルに分類するグリッドを作成した。 その上で、本年度は、流通業における情報技術の導入が組織構造に及ぼす影響に関して日米比較を行った。その結果、他の変数をコントロールしなければ、日米ともに情報技術の導入は組織構造に有意な影響を及ぼすことがわかった。ただし、日本では分権化を推し進めるのに対して、米国では集権化を押し進める傾向にあった。また、日本では、情報技術の導入は、環境の不確実性とタスク・ルーチン性をコントロールすると、有意な影響を及ぼさなかった。さらに、日本では、環境の不確実性が集権化を、タスク・ルーチン性が分権化をもたらしていた。 また、本研究プロジェクトの理論的フレームワークとなっている開発-活用理論とその発展形である企業価値創造モデルを用いて、アジア諸国に日米欧の多国籍企業がアジア危機に対応してどのような戦略変換を行ったかを分析した。その結果、日米欧の各企業の対応は全体的にみれば、活用のほうが多いことが発見された。ただし、各国の資本主義形態が媒介効果を有しており、戦略革新の程度には差がみられた。日本企業の戦略革新はより漸進的なものとなった一方、米国企業の戦略革新は急進的となる傾向がみられた。また、欧州企業の戦略革新はその中間に位置していた。 以上の研究成果については、2000年12月10日-11日に早稲田大学で開催された国際カンファレンス「自己再生組織に向けて:国際プロジェクトNOFIA(情報化時代の新組織形態)1995-2000年の研究成果」において報告された。また、2001年3月29日-30日にアリゾナ大学で開催されるグローバル・リテーリング・カンファレンスにおいても、成果の一部が報告される。
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