日本では、97年の純粋持ち株会社解禁に続き、99年には株式の交換・移転、2000年には会社分割のための商法改正が実施された。さらに2001年には、連結納税制も導入する予定とされている。これらはいずれも、持ち株会社の設立を容易にするものであり、これにより、持ち株会社化に拍車がかかるかどうか注目される。これらの一連の法律改正にあわせて、法改正の厳密な解説をした法律分野の書物とともに、その実践的手引き書の出版が相次いでいる。これらの文献・資料をできる限り丁寧に収集することが必要であり、東京出張の際にもそれに努め、一定程度達成した。現在それらを整理し、論文にまとめる準備をしている。 諸外国、とくに欧州ではこの間持ち株会社に係わって2つの大きな動きが見られた。それは、フランスの放送事業での国有持ち株会社の設立であり、イギリスのBTが持ち株会社を採用し、その組織の大再編を実施する予定であることである。これらは放送と通信事業における再編であるが、注目に値する。いま1つ注目すべきは、上記の日本での法律改正に際し、欧米の実状が調査されているが、そこではとくに法人税制が注目されていた。これはフランス出張の際にフランスの研究者からの、持ち株会社が採用される主たる理由は税制にあるというアドバイスとも一致する。とくにフランスはアメリカとともに、連結納税制の「先進国」の1つであり、その制度と運用の特徴を解明することはますます重要になっている。 国際比較の観点からヨーロッパの持ち株会社をめぐる動きと実状を理解するために、今年は必要な文献の収集と同時に。機器として購入したパソコンを利用しインターネット上に公開された有益な資料の収集にも努めた。この点でも現在、文献の翻訳・整理と論文作成の準備を進めている。
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