本研究の目的はインターネットベースで時間と空間に依存しないテレワークをIT時代におけるイノベーショントリガーとして位置付け、テレワークを実施している個人や企業の分析を通して知的リソースを有機的にネットワークするバーチャルカンパニーやバーチヤルオーガニゼーションを構築するための方法論を企業経営における戦略的視点から導出することにある。 この研究によって得られた結果は以下のような点である。まず、企業はIT化の進展とともに単に時間と空間の制約を受けないというだけではなく、広い関係構造の中において形を変えていくフレキシブルな企業活動の集合体と考えるべきものである。つまり、従来はまさに敵対的関係といわれてきた競争企業間においてさえも連携し、また、組織間、顧客と企業、営利と非営利などの多様な境界を越え、個人や組織の知的資源を相互に連結しともに新たな付加価値の創造を行うことを可能ならしめたのである。企業組織はステークホルダーとの関係性を境界の融合によって根本的に変え、異質な要素を組織内にもたらし、リアルタイムでの即興的な展開で創発性を増幅させ、組織の活性化を促進する。 具体的に記すならば、事業展開におけるITベースのヴァーチャルなネットワーク組織構築の方法論は、協働作業においてはビジョン共有型のコミュニティ作り、組織運営においては臨機応変な価値連結による新たな付加価値創出のためのプロデューサー能力、意思決定においてはコンセンサス重視というよりも共鳴の程度、組織文化としてはコミットメントの高いボランタリーな文化を醸成させることが重要となる。また、ネット上で柔軟に連携することによって、個として自律した個人の起業形態としてのSOHOにおいて、従来とは異なるキャリア開発の方向と新たな自己実現の方策を提示し、個人や地域の再生手段として社会企業への発展可能性を導き出した。情報の共有においては単に共有されただけで伝達されたというわけではなく、むしろネットワーク化でコミュニケーションが進むに連れ、相互理解と同時に知識境界の可視化も進むということが新たな発見であり、これは今後のシステム設計思想における新しい展開を予見させる。
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