本研究の目的は、競争の激化するサービス企業の収益性の向上に寄与する新たなコスト計算システムを構築することである。そのため、本年度は理論面では主としてサービス業務のためのコスト計算としてABC(Activity-Based Costing)に焦点を合わせた。このサービスのABCでは、アウトプットとしてのサービスごとにコスト集計することが必要となる。このときのABCは、単なる財務報告のためではなく、経営管理のための計算として、サービス価値連鎖の観点を取ることが重要である。それにより、サービスの企画、構築から提供に至るまでのコストを各プロセス分類を行い、そのプロセス分類ごとのコストをプロセス横断の因果関係でアウトプットであるサービスに集計する必要がある。さらに、可能であれば提供後にアフター・コストが発生するのであればそのコストもサービスに集計することがより正確なコスト計算となる。このような枠組みでのコスト計算が利益増大のためには必要であろう。 また、実務調査によれば、日本企業において、以上のプロセス分類コスト計算の考え方を取ると、サービス業のうちでも販売など流通サービスでは、電子情報システム活用型の販売方法による販売コスト削減が収益性の向上に直結することが確認された。さらに、製造業の間接コストでは、時間ベースの管理により製造現場のサービス・コストが削減されている。一方、ヨーロッパではサービス企業が増大基調にあるが、そこではネットワーク活用によるグローバル・サービスが大前提であり、その事業展開では情報インフラ・ベースのサービス構築と提供を行い、利益獲得に貢献している。
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