本研究により、サービス企業へのABC(Activity-Based Costing)を適用することの意義を確認し、これをサービス企業ABCへと拡張することができることが明らかとなった。このサービスABCは、顧客に提供する個別サービスのレベルから、大きな1つの事業としてのサービスまで様々なレベルまで計算に利用できる。必要に応じ、原価計算対象としてのサービスのアウトプットを変化させて、その原価計算対象を選択してABCを実施するべきであろう。さらに、それをベースとした管理会計システムとして収益性を向上するには、サービスによる収益と対応させることが重要である。そこで、事業サービスレベルでのコスト計算システムとしてサービスABCを行う際には、サービス業務の特徴に応じて、プロフィット・センター化することで個々のサービスの利益、さらには質のコントロールと、それによる将来の一層の収益性増大が見込まれる。ただし、このようなサービス・プロフィット・センターの設定では、製造業での成功例に見るように、以前に比べてダウンサイズ化することが有効である。ただし、そこでのABCによるコスト配分では、原価の管理可能性を保証することが必要不可欠である。そのような責任会計システムとすることで適正な計画と管理の両立ができる。ここで課題となるのは、近年のサービス業では、情報関連などの先端設備の活用が増大していることである。ABCは労務費部分のコスト計算が中心であるので、設備の管理とそのコストについては今後の研究が必要であろう。
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