平成15年度は、本研究の最終年度にあたっていたため、研究機関中の研究をまとめる作業をおこない、要点つぎのような内容の研究成果をあげることができた。 (1)IAS/IFRS(国際会計基準・米国会計基準)がグローバルスタンダードとして世界各国の会計基準に支配的な影響を与えている。これは、米国を発祥の地として生れた「投資家の意思決定に有用な情報を提供」という利用者指向の新しい会計基準をIASを通じて国際移転を図ろうとするものにほかならない。とくに、このアングロサクソンの会計基準の国際移転に関しては非アングロサクソン諸国における受け入れがそれぞれの国の社会的合意化の装置としての会計機構の歴史を背景とした制度のあり方の違いから伝統的なシステムの根幹を揺るがす新たな問題となっている。これらの国々では、その国の会計制度の伝統的システムの枠組みを堅持しつつ、IAS/US-GAAP適応をいかに具体化させるかについての模索が続けられている。 (2)本研究は、商法会計規範優先システムを堅持し、IASA/IFRS及びUS-GAAPへの適応の商法会計規範システムの再構築を目指した「ドイツ会計基準委員会」の設置とその役割について、その立法過程における議論を踏まえて論究した。ドイツ版GASB(米国財務会計基準審議会)構想を結実させた「ドイツ会計基準委員会」の設置は、1970年代後半からはじまったドイツの商法会計規範システムの枠組みのなかでおきたIAS/IFRS、US-GAAP適応の新しい動きであり、この再編成プロセスのなかにドイツのグローバルスタンダードに対する適応戦略を見出した。 (3)本研究の具体的な研究内容は、(1)商法典第292a条の連結財務諸表の免責条項と(2)商法典第342条の「ドイツ会計基準委員会」の創設にもとづく会計国際化への開放の立法措置を中心にして、IAS/IFRSとUS-GAAPのドイツ基準化を論究した。
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